未然
這 いずる

羽ばたく直前に喰われた蝶
踏みしめられた新芽
強風でちぎれ飛んだ風鈴

未然に産まれて
未然で死ぬ
何者にもなれない
地の塵になるのが唯一の幸せだと

雪のように君のように
晴れた空にしゅわと消えるような
透明な香りを残して
ふと目前に
それがあったと
浮かぶのは
君が
遠くへ駆け出すのに夏の空の
青さを利用したこと
自転車の車輪が回る音が
響いて
永遠のフィルムが回る

何者でもない
この灰色で平穏な今日が来たのも
何者でもないから

私は何者にかなりたくて
私は何者にもなれなくて

野花を踏まないよう
避ける


自由詩 未然 Copyright 這 いずる 2025-09-28 00:39:49
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