未然
這 いずる
羽ばたく直前に喰われた蝶
踏みしめられた新芽
強風でちぎれ飛んだ風鈴
未然に産まれて
未然で死ぬ
何者にもなれない
地の塵になるのが唯一の幸せだと
雪のように君のように
晴れた空にしゅわと消えるような
透明な香りを残して
ふと目前に
それがあったと
浮かぶのは
君が
遠くへ駆け出すのに夏の空の
青さを利用したこと
自転車の車輪が回る音が
響いて
永遠のフィルムが回る
何者でもない
この灰色で平穏な今日が来たのも
何者でもないから
私は何者にかなりたくて
私は何者にもなれなくて
野花を踏まないよう
避ける