水羊羹
たもつ



頬杖をついて
窓から夏が終わる頃の風
リモコンが息絶えた
まだ若かったのに
もうチャンネルを
変えることもなくなった
言葉にすれば
命は軽くなる
そんなことばかり

いただいた水羊羹が
消費期限を過ぎて
冷蔵庫で冷えている
ふとした拍子に
その行く末が
心配になるけれど
そのような時はいつも
冷蔵庫からも
心臓からも遠い

透明な選挙カーが
透明な候補者を乗せて
目抜き通りを走る
連呼する名前は
さよなら
誰にも届くことなく
夏の夕暮れは
水羊羹の中へと
滑り落ちていく



自由詩 水羊羹 Copyright たもつ 2025-09-23 07:43:22
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