風のいろ【改訂】
リリー
花の時期を過ぎれば
気にも止めないでいた
児童公園の隅にある大きな藤棚
敷かれた石畳に
風雨で煤けたコンクリートの
ベンチが三脚
赤茶けて錆びた鉄の藤棚の下で
ちいさな葉は、とめどなく滴り落ちて翻り
追いかけ合いながら砂地へ移ってくる
その足元に流れ来るさざ波は
なに色とも分からず
二羽の鳩だけが、地面に
眼を優しく這わせて息づいている
潤い無く枯れた音へ視線を向けると
濃い焦げ茶色した大きな葉が、
葉先のそり返って丸くなり跳ねながら
揺れるブランコの傍まで行くと休んだ
再び歩を進めるスニーカーの靴音
右腕に提げる膨らんだエコバッグから
あふれ出ている青々とした
小カブラの葉っぱ
厚みある雲の切れ間からのぞく
あおぞら
白っぽく広ごる陽へ伸べた小指に
透ける血の色を見る私は自由
そう、若い日のような
公園を抜けると
集合住宅のベランダの
格子柵から見える干し物がどれも
旗めいている