未練
リリー


 吹きあげる風の中に
 桐の梢は ざわめいて
 生暖かい涙をこぼす
 その下に立つと
 はるかなるものへの憧憬と裏返り
 抑えかねる寂しさ

 赤い血汐をもっている
 私が夜を恐れて
 知らず知らず泣いている
 あなたの声も
 あつい鼓動も思い出すと
 輝く月はくずれて
 そのかけらが胸に刺さる

 それでも
 人を愛したおもいでの疼きと
 身に寄せられた一つのことばが、
 傍にたゆとうて
 道標となる

 私のひずんでいる心の淵で
 たくさんの
 (ありがとう)の想いに
 魂が、相逢う奇跡を願って
 ゆさぶられる

 この一命果ててしまっても
 あいまいな記憶の
 おびただしい日と月を繰ってゆくだろう
 きっと、あなたとの
 喰らい残した夢のなかへ
 

 
 


自由詩 未練 Copyright リリー 2025-09-20 17:03:16
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