未練
リリー
吹きあげる風の中に
桐の梢は ざわめいて
生暖かい涙をこぼす
その下に立つと
はるかなるものへの憧憬と裏返り
抑えかねる寂しさ
赤い血汐をもっている
私が夜を恐れて
知らず知らず泣いている
あなたの声も
あつい鼓動も思い出すと
輝く月はくずれて
そのかけらが胸に刺さる
それでも
人を愛したおもいでの疼きと
身に寄せられた一つのことばが、
傍にたゆとうて
道標となる
私のひずんでいる心の淵で
たくさんの
(ありがとう)の想いに
魂が、相逢う奇跡を願って
ゆさぶられる
この一命果ててしまっても
あいまいな記憶の
おびただしい日と月を繰ってゆくだろう
きっと、あなたとの
喰らい残した夢のなかへ