銀河騎士隆盛期 壱 神の章(バサラバート編)7~8 ガーゴイルの絶体絶命
ジム・プリマス
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ガーゴイルは左腰に吊るしたホルスターに差している、ガス回転遊底式(*1)の自動拳銃を抜いて、銃口の上の、前装填弾倉の総装填確認窓に、赤色の表示がされていることを確認して、六角形の口径0,01メルトのケースレス弾が弾倉に11発装填されており、回転遊底内に初弾が装填され、安全装置を解除すると、銃から弾が確実に出ることを、確認した。
ここのところガーゴイルは、自分がきな臭い状況に陥っていることを、ひしひしと感じていた。
昔、付き合いのあった元老院議員の女性関係の醜聞の後始末を断ったのが、ケチのつき始めだった。
だだの醜聞だけなら、対処していたが、このケースは女性に対する暴力があったから自分の手には負えないと考えたのだ。
このようなケースなら、自分より、より汚い仕事の処理をする関係者に、話が引き継がれるのが普通だが、どうもその為の上乗せに必要なクレジットをケチったらしく、この件がネットワークに漏れたのを、逆恨みされたらしい。
ガーゴイルの脳裏にはカイゼル老師の顔が思い浮かんだ。カイゼル老師が失脚するまでは、ジンウ長老会、10長老筆頭の老師の名前は、頼りになるハッタリだった。
今回の様なケースでは間違いなく、その効力を発揮していた筈だった。
1ヵ月前にその失脚した後のカイゼル老師から連絡があったときは、無視してもよかったのだけど、これまで世話になってきたこともあって、快く引き受けた。
その依頼の内容も、一人乗りのイオノクラフトを公国惑星ローウェルの比較的辺鄙な草原に配達するくらいのことなので、ガーゴイルにとっては朝飯前の依頼だった。
8
狙われていることは分かっていたが安全だからと言って、民間会社とはいえセキュリティの効いた、七重の厳重なロックのついた事務所に何時までも籠っている訳にもいかない。
監視カメラのついた貸しビルの玄関フロアを抜けて、十数メルト離れたイオノクラフトまで歩き始めた時だった。
フードをかぶった男がこちらに向いて歩いてきたのが見えた、その男がクロスドロウホルスターから銃を抜くのが見え、腰のホルスターの銃に手をかけたのだが、焦りのせいでバドグリップ(グリップを浅く握ってしまうこと。)になってしまった。
男はプロだった。先に頭をポイントされ、ダンっと初弾が発射され、その刹那、ガーゴイルは観念した、その弾はガーゴイルの脳髄を貫くはずだった。
その時、緑色の閃光が見えた。その閃光の中でアルミ製の弾が、銀色に輝いて蒸発するの見えた。
*1
この拳銃はヘッケラー&コッホ社が開発したG11を参考にした架空の拳銃である。
G11同様、ケースレス弾頭を採用した前提の、ガス圧利用式、回転遊底を備えた、自働装填式銃で、設定では架空の口径0,01メルトのアルミ弾頭を採用しており、銃身の上部に口径0,01メルトのアルミ弾ケースレス弾を12発、下向きに収納するスプリング圧縮式単装填弾倉を備えている。
回転式遊底がガス圧で回転する時の回転力を利用し、機械式激発ハンマーを圧縮し、フック式装填機構により弾倉からケースレス弾を回転遊底に半連続装填する。半自働装填式拳銃である。
初弾の遊底への装填、不発弾の回収は側面の遊底回転レバーで行う。機構上、速射性に優れた、高精度の集弾性を備えた拳銃として設定する。