紅萩
リリー

 ため息の一つもこぼす
 残暑が根を張る
 帰り道
 会社の敷地の植込みで
 目を和ませてくれる
 萩の花風

 たくさんの
 紅紫の小さな蝶たちが
 (おつかれさまね) と
 やさしく私に
 囁いてくれていたのに、

 そんなきのうが嘘のように
 雑草は刈られて
 丈の長い草花にまかれた
 除草剤
 勤務先の建屋では二日後に
 本部から社長の訪問があるため
 急きょ行われた清掃作業

 嗚呼、のこしておいてほしかった!
 可憐な初秋の訪れを
 冷たいものが胸を過ぎって
 蝶たちはどこへともなく
 うせてしまった………



 



自由詩 紅萩 Copyright リリー 2025-09-17 15:49:02
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