サロメ
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月の晩
私はいつものように君を探しに出掛けた

明るい内は君の為に働いて金を稼いだ

帰ってきたら夜の相手をした

月の晩
私はいつものように君を探しに出掛けた

黒檀のような髪、祈るような眼差し、雪に触れる指

お腹が空いてるんじゃないか、と思ってサンドイッチを作った

月の晩
私は夜にも虹が出ることを初めて知った

あちらから帰ってくる人がいるのかなぁ

サンドイッチを入れたバスケットが揺れている

君はいつも人を馬鹿にして食い物にすることだけを考えていた
どれだけ肥え太ろうとも醜いことを気にしなかった

月の晩
君を探しに行く時、私はいつもとても悲しい気持ちだった

綺麗だと言うと怒った
美しくは無いよと言うと嗤った

月の晩
私はもう何処まで行っても君がいないことを直感していて

一番好きな木の陰に座り込んで泣きながらサンドイッチを食べた

海鳴りのように心臓が脈打っているのが聞こえる

月の晩
血が流れることさえ君は何の価値もないと信じて疑わなかった

君が何処までも飛んでいけるように神様にお願いしたかったけど
人間に翼はないことを知らずにいられるような年ではないのだった

嬉しそうに笑う君の顔が見たかっただけなのに

君は見付からなかった

もう誰にも見付けることが出来なかった

月の晩
私はもう二度と君に会えないと分かっていたのに、それでもわがままを言った

私のサロメ
ヨナカーンは彼女のことを最期に愛しい恋人と呼んだだろうか

この青褪めた首に口付けて愛を囁いて欲しいんだ


自由詩 サロメ Copyright guest 2025-09-11 20:47:26
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