郊外の熱射
飯沼ふるい
日々の一
絨毯に鍬形虫の脚ひとつ
待ち人や蝿打ひとつ納屋の底
冷房をかき分けて寝る三歳児
子午線をくぐれ蚊遣火黙々と
汗拭きてすわ首筋の揚羽蝶
水の二
梅雨空に還す吐息ぞ青白く
紫陽花の露も乾きぬ多生の縁
良縁の跡形もなく
蛭蓆
(
ひるむしろ
)
遠蛙羅生門へと至る道
白雨切る熊鈴鳴りし愛宕山
宇宙
(
そら
)
の三
翠嵐と遊ぶ雲にも道理あり
イカロスは堕ちて井桁の
黄金虫
(
こがねむし
)
昔日の夢泡立ちぬ
斑濃
(
むらご
)
かな
金星を仰ぎ進むや蟻の列
黒南風
(
くろはえ
)
の満ち渡りたる宇宙項
俳句
郊外の熱射
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飯沼ふるい
2025-09-09 22:16:38
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