自称詩人の最後
花形新次
悲しい声がする
悲しい、悲しいと
言っている
誰の声かと
あたりを見回しても
いるのはこの私だけ
ひょっとしたらと
胸に手を当ててみたら
心臓の鼓動が
悲しいと泣いていた
あの日の私は
救われたいなんて
思いもしなかった
誰の前でも
悪魔のように振る舞っていた
孤独なんて当たり前のことだった
死ねば死にきり
と思っていた
ところが今の私は
出来ることなら
この胸の重りを
すべて下ろして
軽やかな気分で
街中を駆け抜けたいと思っている
結局のところ
何もない人生だったから
最後の最後は笑って死にたい
そう思う