その角度で
ベンジャミン

毎日は同じことの繰り返しのようでも
少しずつ違っているものだから


通勤電車の吊革をつかむ
君はまるで風に揺れる果実のように
その身を進行方向に傾けている

列車のドアが開くたび
ため息に似た人の流れに揺さぶられても
君は窓を見つめ
めくられる景色の中に
何かを探そうとしている

そびえたつビルの先端
その先にある空の繋ぎめには
雨上がりの陽射しが臆病に隠れているから
それを
そっとのぞきこむようにして

不安な足元に
うつむいてしまいそうな誘惑を
振り払うようにして君は
吊革にぶら下がる

少し傾きながら
その視線で
窓の外を見上げようとする

そのとき
けして平らではない
流れる景色たちがまるで
空へかけ上がるように見えたなら
君は
陽を反射する瞳の先

ありふれた今日が
明るさを増してゆくことに気づく

   


自由詩 その角度で Copyright ベンジャミン 2005-06-01 06:52:55
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