旅がまたはじまる
唐草フウ

(じゅるりと甘い豊水梨
まだ食べさせられていない
疲れこんで放心
ひととおり過ぎてペタと座り込む)
 
一人で悠悠と横たわりながら耐える
くらしと
半生を捨ててあまい缶詰の汁に
溺れる園で泳ぎ続けるくらし
ああ、来年の高校野球を楽しめるのはどちらだろう

(深緑の
セカンドバッグ
に入っていた
みみず文字のメモ帳) 

正解のないわがままな選択
どちらを選んでもきっと苦しい
それでもたぶんあなたは赦すから
押しピンから外されて落ちる痛みとなる

旧友に送るつもりで 便箋に書いていた
みみず文字で吐露したあなたの少しの諦めに
胸がキンとした
その後は空白
何本もの罫線がこちらを見てやさしくさよならを伝えている

(それは長くて短い旅のはじまり) 






自由詩 旅がまたはじまる Copyright 唐草フウ 2025-09-07 00:03:40
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