響き
花野誉


妹とふたり
霧雨のシンフォニーホール

舞台の上はふたり
セピア色の照明に浮かび上がる

息を吸うたび
音が全身に満たされる

長く透き通る高音の波が
眉間を通過し
思わず目を閉じる

耳から吸った声は
頭蓋内に響き
体の内から溢れだす

肌にぶつかった音は
体温を上げ
総毛立つ肌身

そっと歌う声が
両肩を優しく撫でおろす
私のうなじは波立つ

伴奏は
ほぼギターとピアノだけ

響き浸透していく歌声に
知らないうちに泣いていた
初めてかもしれない

音楽というものがある
この世界に
生まれてこれてよかった







自由詩 響き Copyright 花野誉 2025-09-06 00:13:38
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