ことば
おまる

昔は、ある日突然、今の生活が何もかも破壊されて失うかもしれないと想像して不安になることがあった。若いころはいろいろあってね。すでに全部粉々になってしまった今となってはもう、そんな時代もあったなあと、一瞬にして過ぎ去った刹那のごとく回想するだけだ。けっして小さくはない代償を払って、悲しい目に遭ってきた。それでも良かったと思えることが一つだけある。人生が破壊されてもなお掌に残るものは、信じるに足るのだと知ったのだ。今はお陰様で、毎日やることが決まっていて、忙しく暮らしている。その後、なぜだろうか、私を見誤る人が後を絶たない。きまって向うから近づいてきて、ひとしきり絡んだあとに、一方的に去っていくのだが。私はガチだから。ガチだからこそ、相手にとっては和解しにくい人間なのだろう。彼らは、私が彼らの属する階級で生きていないことが理解できないのだろう。


散文(批評随筆小説等) ことば Copyright おまる 2025-09-02 12:52:30
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