夢と夜風と雪峰と/通り過ぎた初夏の日に
ひだかたけし

夜風がすぅすぅ網戸から
入って来ては肌を撫でる
その微妙な心地よさに
うっとりしている午前三時、
電車は大通りを走り雪峰へ
凍り付くよな身震いを
誘いぐんぐん進んで行く

鈍色空を背景に
白銀の峰が連なって
その威容を放っている
私は薄暗い公道の真ん中を
猛スピードで進む電車の中
只只圧倒され微動だにせず
何故かゆっくり移動していく
白銀の峰を見つめ続けている

(夜風がゆるゆる肌を撫で
夢見ながらキリッと覚醒し
深い感情の持続を読み解く
到来した霊聴意識の状態を
圧倒的な畏怖の念に包まれて
やはらかな安らぎに包まれて)

やがて電車は猛スピードで
暗い公道を走り続け
白銀に輝く巨大な山塊を
ゆっくりゆくり後にして
緩やかに吹き抜ける風と共
跡形もなく消え去る



自由詩 夢と夜風と雪峰と/通り過ぎた初夏の日に Copyright ひだかたけし 2025-08-26 10:38:28
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