メモⅰ
道草次郎

「重力」

電気を消す
横たわる
重力に素直になり
ここちよい疲労を受け入れる
わたしは
有能でも無ければ
あまりの無能ですらない
父であり
子でもある
隠し事をし
真実をすら求める


「ミニマム」

ソファにすわる
まるで
ひらがなのよう
早朝の音を拾い
文章を脱ぐと
三千年と
三万年は
三十万年のなかで
愛らしくなる


「わたしはかいた」

わたしはいいわけのため
多くのことばをかいた
できないことを
できるようにする努力をせず
わたしは
わたしのやりやすいやり方をした
いいわけでないことばが
いったいどこにあったかのか


「回想」

わたしはいのち
わたしはうごく
わたしはたべる
わたしはねむる
わたしはいのち
わたしはさかな
わたしはけもの
わたしはことり
わたしはいのち
おおむかしから
とおいみらいまで
ずうっとあった


自由詩 メモⅰ Copyright 道草次郎 2025-08-21 07:05:00
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