しりとり詩Version2.0
佐々宝砂

種まきした朝
浅い海に干上がる
ガルシンの赤い花はどこに?
小憎らしいエビが
美がなんとかと解説する
スルメになっちまえ
前から後ろから
身体はがんじがらめ
ラメ散りばめて
馬手(めて)に拳銃 弓手(ゆんで)にナイフ
If I wish
修羅しゅしゅしゅ
主体という幻想よ
うようよ蠢く
めくるめく幻から
からい現実を抽出せよ

瀬よ 冷たい背中
泣かずとも夜は来る
くるくると日は昇り落ち
遠近(おちこち)のひとびとは
永久に目覚めを知らぬ
ら抜きで喋れ
ベレー帽を脱げ
ぬけぬけと走れ
痴れものたち
たちの悪い黒雲
曇りのないガラスは割れ
われわれは無実だ
実弾を装填しろ
城を落とせ
賭(と)せ おまえ自身を
芯をさらけ出せ
惰性に身を任せ
化石のようにじっと待つ
末日の日射し

座敷には侘助一輪
凛々と咲き
先走る悲しみを

身を尽くしても会いたくねえ
ねえやは十五で嫁に行ったが
タガが外れて帰ってきた
敵対する赤と緑
ドリームは無理矢理
槍でもバールでも持ってこい
テコいっぱいでも動かんぞ
肝臓突かれても黙らん
乱発するfour letter word
ワードってソフトとして嫌いだ
韋駄天の速度でキイを打て
うてなに坐すええかっこしい
強いて言えばあれが敵
的確に描写
しゃしゃりでるやつをぶったぎれ 

切れぎれになってしまう
マウイから吹く風に
是にあれ非にあれ
荒れた唇はなつかしみ
しみとおる冷たさが
探していたものとは違うと
うといわたしでも気付く
づくづくと崩れゆくわたし
確かめることができない記憶
臆することのなかったあのひと
ひとはひとをとどめ得ない
ナイフで心臓をえぐり取って
手の中に収めておかない限り
ぎりぎりと時計は動く
ごくわずかな望みも
身も蓋もない嘲笑につつまれ

まれびとよ
とよみわたる波音の果て遠い遠い南から
からかいの声浴びてくるひとよ
とよあしはらのちいおあきのみずほの
ほのくらい土にその足を置け


自由詩 しりとり詩Version2.0 Copyright 佐々宝砂 2025-08-13 20:41:52
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