誰も知らない生卵
松岡宮

カバンの中に生卵
十個パックを詰めたまま

急な用事で地下鉄に乗る
手すりにつかまり
ぐっと息をのむ

加速で取り残される きみ
片手のひらで包み込む から
いちばん弱いものに合わせるちから

誰かが抱えているものを
誰も 知らない

窓に映った自分のかおが
固まってゆく


自由詩 誰も知らない生卵 Copyright 松岡宮 2025-08-09 00:05:31
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