ごめんね
さち

その

私たちが乗り込んだ都電の座席にいた

私たちが乗るのと入れ替えに

その

両隣が空いたので夫が左側に座った

私が右側に座ろうとした時

その

「ずれますよ」と言って夫の隣を空けてくれた



礼を言った時 私は初めて彼女をちゃんと見た

真っ黄色の髪をして

サングラスをカチューシャにして

長い爪で器用にスマホを操作している

唇にピアスが2つ付いている



しばらくして小柄なお婆さんが乗って来た

スマホを見てたと思ったのに

その

スッと立ち上がりお婆さんに席を譲った



立ち上がった

その

おへその見えるチビTを着て

厚底のゴツいスニーカーを履いている



へぇ…

思わず心の中で呟いた

と、同時に

自分の中にあった先入観に気付いて

思わず心の中で呟いた



ごめんね




自由詩 ごめんね Copyright さち 2025-08-06 22:41:47
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