カフカのいるカフェ
室町 礼

その喫茶店には
舟木一夫が流れていて~♪
ふふん
「まだみぬ君を恋うる歌」
「高原のお嬢さん」
「君たちがいて僕がいた」
首のあたりまで赤面が
せりあがってくる~♪
そこへ
砂糖とミルクを入れないでどうぞと~♪
ふふん
マスターがコーヒーカップを置く
苦いだろうねと
心配そうに~♪
大人の味だねと
無理して返事するとぉ~♪
ふふん
長生きしていい事などないがぁ~♪
違う時代の空気というものを比較して
味わえるという意味では
長らえるのも面白いかもしれない
舌打ちしたくなるほど
    濃いブラックだけどと~♪
ふふん
カウンターの背面には~♪
体操の写真が飾ってある~♪
東京オリンピックの年
国体入賞とある~♪
ツカハラですねとたずねるとぉ
2回宙返り1回ひねり
一回ひねっちゃったんだ
とこたえる
全部裏返るね
だから着地がむつかしい
両腕をひらき
お尻を突き出しているのは
そのためだね
うん
邪悪だね
だれにもわからないさ
マスターは朝日新聞で
顔を隠す
観葉植物に
青虫がへの字で動いている
猿よりましだ
猿でなくてよかったねと
会話するぅ~♪
舟木一夫が作詞作曲した
「グット・バイ・ソング」
が流れてきてぇ~♪
もうあれだね
金さんにこの国ぜんぶ
ふっ飛ばしてもらいたいね
この汚物の山を
と替え歌うたう


 






自由詩 カフカのいるカフェ Copyright 室町 礼 2025-08-05 09:08:30
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