たとえば 青空とか
ただのみきや

本当の青空 見たことあるかい

良く晴れた日でもそんなに青くはないよ

水色とかそれこそ空色とかって感じで

カリフォルニアとかモンゴルなら

本当の青空が見えるだろうか

本日は晴天なり

窓からはカラスやスズメ

トンボなんかが大気を渡っていくのが見えます

戦場も晴天なり

戦闘機や戦闘ヘリがやかましく空気を裂いて

血も黒煙もあの空が

嘘っぽく青っぽく吸ってくれるでしょう

家の近くの小児センターに

医療ヘリが降りて行きます

きっと間に合うよ

僕の息子の自発呼吸が止まった時は

救急車はノロノロ道を這っていったけど

あの日はかなり青空に近かった

そうあと一歩で完全な青空ってくらいに

本当はね 青空なんてイメージにすぎないのさ

たとえ宇宙ステーションから青い地球を見下ろして

詩を書いたって

僕らのこころの中にある青空への憧れには届かない

生と死の境みたいな

存在を溶かしてしまうような

永遠の入り口みたいな

あの青い茫漠を求め

僕らは永遠に完成しない

ことばを連ねバベルの塔を築き続けている

神の怒りを買うほどに

ことばで固めた虚構の翼を駆って

青空へと漕ぎ出して

落ちて 墜ちて ただ堕ちて

死に続けている 僕らは延々と

僕らはあらゆる束縛と隷属の中で夢見続ける

あの本当の青 青空深く

吸い込まれてゆく日を

自由とか解放とかそんな概念の鎖からも解かれ

肉体と ことばと 時間から解かれ

刹那 永久の体感 そして

心地よい意識の完全なる消失を



                      (2025年7月3日)












自由詩 たとえば 青空とか Copyright ただのみきや 2025-08-03 13:18:00
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