酷暑(即興詩)
リリー


 空が青い
 一車線道路の縁石で
 鎮座ますコーヒーの空き缶は
 吹きつける生ぬるい風に
 耐えている

 一枚の白紙のような
 灼熱の路面に立っていると
 なにも見えなくなって
 方向感覚すら失ってしまいそう
 この空の青さを
 空き缶は、胸いっぱいに吸いこみ
 瞳をとじて瞑想しているのかも知れない

 樹の陰では波の華の様に散る
 蝉の絶叫
 神仏の存在も慈悲も
 人間の愛も祈りも
 何一つ語らない
 生命を未来へつなぐための魂のうた
 が、耳に冴える午後

 誰にも気付かれずに空き缶は
 空が青い時空の狭間で、腰を据えて
 耐えているのだ
 
 
 


自由詩 酷暑(即興詩) Copyright リリー 2025-08-02 15:15:50
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