酷暑(即興詩)
リリー
空が青い
一車線道路の縁石で
鎮座ますコーヒーの空き缶は
吹きつける生ぬるい風に
耐えている
一枚の白紙のような
灼熱の路面に立っていると
なにも見えなくなって
方向感覚すら失ってしまいそう
この空の青さを
空き缶は、胸いっぱいに吸いこみ
瞳をとじて瞑想しているのかも知れない
樹の陰では波の華の様に散る
蝉の絶叫
神仏の存在も慈悲も
人間の愛も祈りも
何一つ語らない
生命を未来へつなぐための魂のうた
が、耳に冴える午後
誰にも気付かれずに空き缶は
空が青い時空の狭間で、腰を据えて
耐えているのだ