いまだに詩なんて書いてるからだよ
はるな


東京駅で(またもや)ぶつかりクソじじいにぶつかられて有楽町の駅まで吹っ飛んばされてる間にわたしの頭のなかに浮かんだのは(いまだに詩なんて書いてるからだよ)それから(有楽町でぶつかられたことはないな)、京浜東北線のぺらぺらな水色、せっかくここまで来たんだから品川あたりまで飛ばしてくれないかな、水族かんもあるし。泳ぐさめやいわしやえいの裏側を見つめながら君のこと好きだった。足元の暗い館内ですぐに転ぶ君のこと好きだった。いるかがジャンプするたびに息をとめる君のこと好きだった。それなのにどうして大丈夫って言ってあげられなかったんだろう?(いまだに詩なんて書いているからだよ
)有楽町はよそよそしくて、気を抜くとすぐに地下鉄に乗せられてしまう。降りなきゃいいのに、わたしの足はいつも改札を通り抜けたがるので。どうして大丈夫って言ってあげられなかったんだろう。君のこと好きだった、浅はかで、弱くて、強欲で。かんたんに傷ついて、すぐ星を飲み干してしまう。歩いて歩いて日本橋、古い欄干を撫でてうっとりする君のこと好きだった。街はいまでは暑すぎて、十歩を一歩に縮めてく。どうして正しくいようとしたんだろう。そんなになぜきちんと泳ごうとしたんだろう(できないのに)?だって生まれ育った街には海がなくて、いつ落ちても(君といっしょに)泳いで岸に行けるように、あの水族館の分厚いガラスがいつ割れたっていいように、ひっしに準備してた。どこにだって行けるように。でも、東京駅にも上手につけない。飛ばされてる間にわたしが考えてることは、(いまだに詩なんて書いてるからだよ)


自由詩 いまだに詩なんて書いてるからだよ Copyright はるな 2025-07-29 14:35:15
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