敵に食塩を送る
イオン
「それじゃ
敵に塩を送るようなもんだよ」
「先輩、そうです
塩を送って高血圧にして組織の血管を
ボロボロにしてみせますよ」
「いやいや、敵に塩を送るって
苦境にある敵をあえて助けるという意味だよ」
「先輩、そうなんですか?」
「ただね、ことわざができた昔の塩は
天然塩で貴重なものだったからね
今は化学的に作った安い食塩が主流だから
過剰に摂取させて相手を倒すと言う
君たちの解釈もありえる」
「先輩、それじゃ
敵に食塩を送るでいきましょう」
「なんだかな
一説にはね、日本人は減塩しすぎで
高血圧が増えているという説もあるんだ
減塩しすぎると血液中のナトリウムが減って
腎臓から血圧を上げるホルモンが分泌されるらしい」
「先輩、それじゃ何もしなくても?」
「そう、相手には何もしなくてもいい
我々がするべきなのは
戦わずにして勝つための戦略を立てることだ」
「戦うから勝ち負けが決まるのに
戦うなと言われても困ります」
「ごめん、そうだな
勝つために何ができるかよりも
いかにして負けないかを考えろと
僕もよく言われて悩んだよ
結局、敵は相手ではなくて自分なんだ」
「先輩、自分たちなりに考えてみます」
「そうだね、でも
相手に塩を送ってもらう自分になる
なんて考えはダメだからね」
「先輩、可能性を否定しないでください
先輩たちがやり尽くして今この状況です
もう、我々には逆転の発想ぐらいしか
残されていないんですよ」