ノイバラ
リリー
青空が遥か高く張りつめた時
草も花もない地上に
私は頼りなく立っていた
掌の感触は忘れていない
あなたの爽やかな顎をなで
たくましい肋骨を数えた
奇妙に光る瞳で私を縛りつけ
ねむりすら奪いとる
その力に、
あなたが去った後
疲れているのを発見する
月がのぼり晴れ渡った夜空のある時
清しく思うあしたには
心に湧きおこらない
昨日のざわめき
そして青い空の渦巻く音をきく時
互いがとまどって言葉にもしないまま
もはや失われていたのだろうか
恋の言い分
尖った靴先で湿った草地に穴を掘り
ひとりで摘んだ野茨の実を埋めて
つよい風に押される背中は、
その場所の記憶を微かにとどめる