ノイバラ
リリー


 青空が遥か高く張りつめた時
 草も花もない地上に
 私は頼りなく立っていた

 掌の感触は忘れていない
 あなたの爽やかな顎をなで
 たくましい肋骨を数えた
 奇妙に光る瞳で私を縛りつけ
 ねむりすら奪いとる
 その力に、
 あなたが去った後
 疲れているのを発見する

 月がのぼり晴れ渡った夜空のある時
 清しく思うあしたには
 心に湧きおこらない
 昨日のざわめき

 そして青い空の渦巻く音をきく時
 互いがとまどって言葉にもしないまま
 もはや失われていたのだろうか
 恋の言い分

 尖った靴先で湿った草地に穴を掘り
 ひとりで摘んだ野茨の実を埋めて
 つよい風に押される背中は、
 その場所の記憶を微かにとどめる
 


自由詩 ノイバラ Copyright リリー 2025-07-22 06:00:57
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