文字のない本
月乃 猫

白い本をひらく

そこは、永遠てしのない階段が続く

教えられたままに ゆっくりと登っていく

いつか空に近づくころ 段差は代わりに五線譜になった

そこからは、音符の上をのぼりはじめる

悲しい音をださないように

騒音らしきもので人を傷つけないように

気を付けながら

寂しい音に心を 乱さないように

足のしたに聞く音を うつくしいものにしようと、

けれど、音感は悪くわたしは、なんども踏み違える

なんなく跳ねるように 登る人の背ばかり見ながら

空のさきには 天はなく

いつも見る太陽がかがやいていて、

いつしかそれも うずくまる小さな向日葵の笑顔で、

ここは悔やむことも 懺悔もいらない

星さえない空の 外

かけがえなのない なにげない暮らしが

ただひたすらに 続いているだけ




自由詩 文字のない本 Copyright 月乃 猫 2025-07-21 19:40:53
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