文字のない本
月乃 猫
白い本をひらく
そこは、永遠てしのない階段が続く
教えられたままに ゆっくりと登っていく
いつか空に近づくころ 段差は代わりに五線譜になった
そこからは、音符の上をのぼりはじめる
悲しい音をださないように
騒音らしきもので人を傷つけないように
気を付けながら
寂しい音に心を 乱さないように
足のしたに聞く音を うつくしいものにしようと、
けれど、音感は悪くわたしは、なんども踏み違える
なんなく跳ねるように 登る人の背ばかり見ながら
空のさきには 天はなく
いつも見る太陽がかがやいていて、
いつしかそれも うずくまる小さな向日葵の笑顔で、
ここは悔やむことも 懺悔もいらない
星さえない空の 外
かけがえなのない なにげない暮らしが
ただひたすらに 続いているだけ