夏の空白
塔野夏子

晴れている
蝉も鳴かない
正午

巨きな空白 が
其処に置かれたような
静寂

その静寂には
不思議な重さがある
その無が
世界ひとつ分と
釣り合うかのような

あるいは
この巨きな空白は
ほんとうに世界の消失点
なのかもしれない

蝉も鳴かない――
いずれにせよ
この空白に圧されたまま
ちいさな午睡に
落ちるしかなさそうだ



自由詩 夏の空白 Copyright 塔野夏子 2025-07-21 11:28:10
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
夏について