自由のランチ
リリー

 
 湖は光を洗い
 まろい音をはじきながら 
 たち渡る風が青じろいまぼろしをつくる

 魔法瓶の麦茶が喉を通る冷たさ
 図書館の帰り、
 昼どき近くの公園で
 セミの鳴きに耳を傾け
 ほうばってみる
 塩を効かせたおむすび

 ベンチで座る頭上から
 のぞきこんでくる
 桜木に寄りあう虫たちの視線
 梅干しの酸味が暑さすら、
 雑草の葉先のほうきで掃いてしまう

 手にとった二つめのおむすびは
 たっぷり入った辛子明太子
 かぶりつくと脳みそが
 くすぐったい

 対岸の大橋は日輪から溢れおちた
 うすむらさきの花の蔓の様に
 眩しい弧をえがき
 巨きな鎮りのなかに
 夏が開いている




自由詩 自由のランチ Copyright リリー 2025-07-14 14:05:21
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