自由のランチ
リリー
湖は光を洗い
まろい音をはじきながら
たち渡る風が青じろいまぼろしをつくる
魔法瓶の麦茶が喉を通る冷たさ
図書館の帰り、
昼どき近くの公園で
セミの鳴きに耳を傾け
ほうばってみる
塩を効かせたおむすび
ベンチで座る頭上から
のぞきこんでくる
桜木に寄りあう虫たちの視線
梅干しの酸味が暑さすら、
雑草の葉先のほうきで掃いてしまう
手にとった二つめのおむすびは
たっぷり入った辛子明太子
かぶりつくと脳みそが
くすぐったい
対岸の大橋は日輪から溢れおちた
うすむらさきの花の蔓の様に
眩しい弧をえがき
巨きな鎮りのなかに
夏が開いている