遠雷 
月乃 猫

綿毛のしっぽ
小鹿は 天の一点を見つめ

遠雷は、雨か
我知らぬ予兆の
布告

与えられた
つばめの空を行く航跡の曲線文字を
なぞっては、
その意味を解いていく

ー路をうしなわないように

❘生きるものの涙が永い時間をかけて 落ちることがないように

陽差しに 耐える花たちさえ
いっそのこと と、打ち付ける土砂降りの雨を 夢み 
花弁を揺らす午后

昨日を忘却にする響きは、
乾いた金属の風鈴の音を重ね
あらゆる すべてを充分でないと
自分を卑下する碧空に 轟き

夜の甘い水を夢みる
小川の迷いボタルも、ナスターシャの葉のしたに眠る
眠りをやぶられ 
早起きの朝顔は、まどろみを阻止された

花を終えるジギタリスのささやかな微笑みのした 
のっぽのデルフィニアムの陰に
野バラはうす緑の棘を研ぐ水をもとめる

いまだ
陽光は、液化した黄金色 響烈な光の調べで庭をみたす 

乾いた梅雨の刹那
響きは、すぐに
私と 私の麦わら帽子をうつ
大粒の雨にかわれ





自由詩  遠雷  Copyright 月乃 猫 2025-07-03 10:34:24
notebook Home