遠雷
月乃 猫
綿毛のしっぽ
小鹿は 天の一点を見つめ
遠雷は、雨か
我知らぬ予兆の
布告
与えられた
つばめの空を行く航跡の曲線文字を
なぞっては、
その意味を解いていく
ー路をうしなわないように
❘生きるものの涙が永い時間をかけて 落ちることがないように
陽差しに 耐える花たちさえ
いっそのこと と、打ち付ける土砂降りの雨を 夢み
花弁を揺らす午后
昨日を忘却にする響きは、
乾いた金属の風鈴の音を重ね
あらゆる すべてを充分でないと
自分を卑下する碧空に 轟き
夜の甘い水を夢みる
小川の迷いボタルも、ナスターシャの葉のしたに眠る
眠りをやぶられ
早起きの朝顔は、まどろみを阻止された
花を終えるジギタリスのささやかな微笑みのした
のっぽのデルフィニアムの陰に
野バラはうす緑の棘を研ぐ水をもとめる
いまだ
陽光は、液化した黄金色 響烈な光の調べで庭をみたす
乾いた梅雨の刹那
響きは、すぐに
私と 私の麦わら帽子をうつ
大粒の雨にかわれ