親友と飲む夜
花野誉
親友に逢う夜
朝からつま先が浮足立つ
去年の秋 中津駅で飲んで以来
大学を出て
四百年以上続く造酒屋に勤め
今や重鎮の彼女
彼女が選んだ店で待ち合わせ
少し遅れて入ってきた彼女の声に
心が一気に解きほぐされる
出逢ったのは中学一年生
初めての遠足
出席番号が前後の並び
突然の雨に私の傘で雨宿り
ただそれだけで親しくなった
交わした言葉は覚えていないけれど
女手一つで息子を育て
苦労多きも一言も弱音を吐かず
ただ喜びだけを語った彼女
軽やかで爽やかな空気を纏う人
彼女を想うと
胸熱く涙がこぼれそうになる
彼女に出逢わせてくれた
何某かへの感謝のそれである
離れていても
出逢えば直ぐに溶け合う
今夜は瓶ビール一本に日本酒を四合
話が尽きず 気がつけば私達だけ
ええ きっと
来世も彼女と出逢うに決まっている