火群
りつ

風はゆふぐれの懐かしさを湛えていた
《ア》と《オ》の螺旋が交差し争って
辺りは静に満ちていた

みみのあな

鼓膜を突き刺すくらいキンと痛い

酔いどれ月が
小石となって
ばらばら礫
捨てられた盃を割る

“月が死んじゃったよ”
“お葬式しなきゃね”

陽気な声のアルルカンたち
彩も錦な鮮やかに薫る夜を纏い
『祝祭』と【初夜祭】の始まりを告げ
貴腐酒を飲み干した


月の死を哀しんだのは海だけ
海はそっと月の礫を集め
凪いだ波で出来たRoadにちりばめ
海星の《ア》と《オ》の乳を流し
唄った

  (Perthro !)

静寂の中に有った


そして
礫は青く青く燃え始め
漁火となった


自由詩 火群 Copyright りつ 2025-06-25 01:07:58
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