朝がやってくる
そらの珊瑚

生き物として残り時間はもうそう多くない
やっかいなのはいつまで、なのかは誰にもわからないこと
いっそ自分で決めてしまえば楽になるのかしら

喫茶店でクリームソーダを飲みながら
思い出を誰かに語るなんて久しぶりなの
若かった頃、結婚相手に
「きみは声がいいね」
と誉められたのよ
もっと嬉しかったこともたぶんあったはずなのに、
なぜかそれだけを覚えてる
そうして心に火を灯すの

その人はさっさとひとりこの世から去ってしまったけれどね

生きていくことは残酷
明日になればまた一日年をとる
道が続く限り
たった独りで
それを引き受けて行くしかない

朝日が現れて
わたしが生きるこの世界を明るく照らし出す
光があちらこちらに宿り
鳥の声が降ってくる
生きづらさはなにも変わらないけれど
美しいものたちがあふれた
朝がやってくる
わたしはこの朝の一部になる


※映画「エリア75」を観て。
一部ストーリーに添ってますが、わたしが感じたことを主人公の独白として書きました。


自由詩 朝がやってくる Copyright そらの珊瑚 2025-06-23 12:26:29
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