朝がやってくる
そらの珊瑚
生き物として残り時間はもうそう多くない
やっかいなのはいつまで、なのかは誰にもわからないこと
いっそ自分で決めてしまえば楽になるのかしら
喫茶店でクリームソーダを飲みながら
思い出を誰かに語るなんて久しぶりなの
若かった頃、結婚相手に
「きみは声がいいね」
と誉められたのよ
もっと嬉しかったこともたぶんあったはずなのに、
なぜかそれだけを覚えてる
そうして心に火を灯すの
その人はさっさとひとりこの世から去ってしまったけれどね
生きていくことは残酷
明日になればまた一日年をとる
道が続く限り
たった独りで
それを引き受けて行くしかない
朝日が現れて
わたしが生きるこの世界を明るく照らし出す
光があちらこちらに宿り
鳥の声が降ってくる
生きづらさはなにも変わらないけれど
美しいものたちがあふれた
朝がやってくる
わたしはこの朝の一部になる
※映画「エリア75」を観て。
一部ストーリーに添ってますが、わたしが感じたことを主人公の独白として書きました。