メトロノームの夏
望月 ゆき
水たまり広がる波紋に耳すましきみのリズムでやってくる夏
砂浜に置いてきたもの捨てたものロケット花火と添い寝する夜
8月のリップカールのてっぺんで届きますよにぼくのメロディ
引き潮のすきまに足をすべらせて水平線に一歩近づく
スプリンクラーをまたいではしゃぐ朝五感温度はマイナス8度
永遠を感じた夏がすぎてゆくクリィムソォダのにごる速さで
スカートの砂はらい落とす手のひらでさよならだけを落とさないきみ
いたずらに風鈴ゆらし笑うきみふたりの夏がこぼれだす午後
ふりそそぐ蝉時雨だけ抱きしめて静寂の足音をかきけす
遠雷にかくれんぼの入道雲ときみを探せず終わりゆく夏