泡沫
武下愛

深海に刺す淡い光で満たしたかった。世界中をなんて思ってた。手が届かない事を知って、深く深く沈んでいく。ゆらゆらりとこぽこぽりと埋め尽くしていく塩辛い水が。鉛のように重くなっていく体に、浸み込んでゆく。呼吸ができない苦しさで。世界はできているんだ。



見えない事は圧されて目が潰れているから。はなせない事は壊れる事が怖いから。聞こえないのは破けてしまったから。



あがけばあがくほど吸い込んだ塩水で死んだのは、紛れもない。私達でしかない。助けてのこだまが。。。うたかた。。。



もう戻れないのかななんて思いながら潰れた目で淡い光を思った。



平和であればいいのにと。


自由詩 泡沫 Copyright 武下愛 2025-06-20 13:02:46
notebook Home