ファッションモンスター
凍湖
もう服を買うな、買うな、と言い聞かせながら
またショッピングサイトを漁ってる
季節の変わり目には
巨大なショッピングモールを足が棒になるまで
ぐるぐるまわるが
どこにもぴったりなやつがなくて
冷たい重さにうなだれる
〝そんなのあたりまえだよ
あんたの素体があんたにぴったりじゃないんだから
それにあう服なんてないんだよ〟
それでも、布切れで持って生まれたものを誤魔化すしかないので
また服を探す
ファッションモンスターになってみたかったよ
化け物と謗られたのは歴史の話ではなく
ついこないだ
大統領がそんなやつらはいないと公式にアナウンスしたり
銃殺されたり刺殺されたり
そんなことばかり耳に入ってくる
こんな世じゃ気軽にトイレに行くこともできない
わたしも他の人と同じようにおしっこしたいのだが……
ファッションの棚に
わたしと同じ名の人の本が並ぶ
めまいがするほど遠くて笑う
わたしの名をあなたがたが知らなくても
わたしは隣りにいる
あなたがたがこわがってるのを横目で見て
淡々とスーパーで半額弁当を手にしてる
こわいのはこっちのほうだよ
いっそ言ってやりたいけど
面倒だから擬態してる
虫のように
いつも