月下、口ずさんで
みぎめ ひだりめ
伸びやかに ひびかせてみて
小さな耳を 掻き抱いて
月の端から生えた 竜の顎が
頸木に巻かれて うなだれる
ここは 空にいちばん 近いところ
星さえ望めば 奪えそう
宇宙には 葛藤があるから
煌めくさまが 美しいのだ
眼が覚めてしまいそうなほどの
偶然になら 会ってみたい
言葉が 空を飛んだら
どんな枷だって 吹き飛ばせるんだろう
軽やかに 応えてみせて
小さな手で 地球儀を回して
わたしの口から逃げた 狼の首が
なにかを食べようと してた
生きてるって 難しいって言って
喉の奥からさ
美しいって 苦しいって信じて
捕えられた竜の 大きな翡翠の眼が
薄らと寒空を つらぬく