横浜からの手紙
花野誉

「あなたが入っていたらいいのに。」

その一文に鷲掴みにされた

先日送った小包

そのお礼の手紙

初めての あなたからの手紙

美しい字で書かれた宛名を見て

あぁ、そうだったなと思い出す

教室の後ろに貼り出された書写

私も幼い時分から書道をしていたけれど

あなたの字とは雲泥の差

小癪な奴といつも思っていた

散々なドライブからの

一度きりの口吻のあと

あなたは横浜に行ってしまった


近況と部屋の間取りなど

丁寧なです・ます体の文章

恋文とは程遠いもの

それがとても新鮮で

真新しい二人になった気がして

そんな関係でもよいかと思えた

でも二枚目の手紙で

心の箍が外れた

「あなたが入っていたらいいのに。

小包に入っていないか探しました。

独身の間に一度、横浜に来なさい。」









自由詩 横浜からの手紙 Copyright 花野誉 2025-05-29 08:07:38
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