海辺にて
レタス

真夏の予感に誘われて
まだ暗い路を車で飛ばし
やがて東の空は鋼色を帯びてきた
ウィンドウを開けると
潮の香りが車中に満ちて
風の言葉に誘われ浜辺に着いた
五月の歓びが背筋に走る
男か女かわからないけれど
波打ち際に誰かが膝を立てて座っている
話しかけた方が良いのか
そっとして置いた方が良いのか
ぼくは戸惑った
胸ポケットから煙草を取り出し
一吸い 二吸い…
紫煙は風に流され消えてゆく
やがて陽が昇り
その人影は若い女だとわかった
胸の鼓動は鐘のように高鳴り
近付いてみると
彼女の瞳はスワロフスキー硝子のように
キラキラと澄んで輝いていた
何処かで逢ったような気がする
彼女はぼくに気付き振り返えった
あぁ… 何処かで逢ったような
おはようとぼくは囁いた
彼女もおはようと囁いた


自由詩 海辺にて Copyright レタス 2025-05-20 17:33:02
notebook Home