海辺にて
レタス
真夏の予感に誘われて
まだ暗い路を車で飛ばし
やがて東の空は鋼色を帯びてきた
ウィンドウを開けると
潮の香りが車中に満ちて
風の言葉に誘われ浜辺に着いた
五月の歓びが背筋に走る
男か女かわからないけれど
波打ち際に誰かが膝を立てて座っている
話しかけた方が良いのか
そっとして置いた方が良いのか
ぼくは戸惑った
胸ポケットから煙草を取り出し
一吸い 二吸い…
紫煙は風に流され消えてゆく
やがて陽が昇り
その人影は若い女だとわかった
胸の鼓動は鐘のように高鳴り
近付いてみると
彼女の瞳はスワロフスキー硝子のように
キラキラと澄んで輝いていた
何処かで逢ったような気がする
彼女はぼくに気付き振り返えった
あぁ… 何処かで逢ったような
おはようとぼくは囁いた
彼女もおはようと囁いた