鬼女近影
ただのみきや

桜が咲いているのを最初に見かけた日
あくる日にはいつも激しい風が吹く
思い起こすと毎年そうだった気がする

咲いたばかりの桜は見かけによらず強情で
千切れそうで千切れず
散りそうでも散らない

盛りを超えれば風など必要なく
吐息で散り
眼差しで散り
沈黙にすらはらはらと
木漏れ日にも身を横たえて

ああ嵐 花の錯乱 桜の舞
安吾だったかしらん
この国に生まれ育ち
それが文化の刷り込みだとしても
こんなにも惚け
生と死と色香
その凝縮 その臨界
淡く 濃く

このなものに魅かれて痴れて
人生だめにできるのなら


                (2025年5月3日)









自由詩 鬼女近影 Copyright ただのみきや 2025-05-03 16:15:22
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