偶然、和合亮一を少し読む
室町 礼

※敬称は略させていただきます。
或る無名の、特異な登山家の記録を知
りたくてノンフィクション作家佐野眞
一の本を数冊まとめて中央図書館に
予約したところ後日、近くの図書館へ
本が届いた。
もらいにゆくとどういうわけかその中
に佐野眞一と詩人和合亮一の対談本が
入っている『言葉に何ができるのか』
(徳間書店)
わたしはルポライター佐野の創作の秘
密を知りたかっただけでこの本がまさ
か和合との対談本とは知らなかった。
少しがっかりしました。
和合亮一か、和合亮一ねえ、
久しくその名前を聴かなかったし意識
にものぼらない詩人だった。いや、そ
もそも素人のわたしは詩誌を読まない
のでSNS投稿掲示板以外で詩人の詩を
読むことが滅多にないのだけど3.11の
詩の礫で有名になった詩人だというこ
とくらいは知っていた。
でもこの方、あの詩を書いたことで幾
人かの有名詩人たちから批判されたん
じゃなかったっけ。それで和合も反論
したりしてかなりざわめいた。
水面に波が立つことはいいことであっ
て毎日でも詩の世界にさまざまな波紋
が起きてほしいと願っているのだけ
ど今はそういうの「場が荒れている」
ということで忌避されてとにかく場が
静かであることがいいことらしい。
つまらない時代だねえ。
さて、
和合の詩の価値や良し悪しについてわ
たしごとき素人には何もいえないけど、
彼がツィッターを始めたのは震災が起
きる2ヶ月ほどほど前だったんですね。
谷川俊太郎の息子の谷川賢作からツィ
ッターのことを知らされ「これ、面白
いからやろうよ」と勧められたのが1
月9日。ところが10回ほどツィート
してフォロワーが7名ほどしかつかな
い。
それですぐにやめたといいます。
このときの気持ちよくわかるんです。
わたしも2年前から始めて今はフォロ
ワー1030人ほどいるんですけど最初
は何を書いてもどこからも反応がなか
った。
そもそもわたしはだれかに忖度して書
かないし右とか左といった党派性もな
いからフォロワーが1000を越えても、
ちょとした発言で、一日でフォローが
400ほど消えたことなどしょっちゅうで、
1000から先が伸びない。ジェットコー
スターみたいにそこを境に上がったり
降りたりしている。
でもX民に詩なんか無理だろうな
と思って一度、少し平板な詩を書いて
ポストしてみると月に一人か二人イイ
ネをくれることがある。
政治社会についての発言は一日に20
0ちかくのイイネがつくのだけど詩な
んかにイイネがつくとうれしい。
それからこんな難しい話はおそらく誰
にも理解されないだろうなというよう
な話を書いてみたことがある。ところ
がその難解な話に反応して返事をくれ
た方がいたのにびっくりした。ちゃん
と理解している!
ええーっと思った。誰にもわからない
はずなのに! 泥沼のような大きな池、
それがツィッターの見えないどろどろ
した闇のような世界だとすれば、まさし
くそこから何が飛び出してくるかわか
らない。愚者もいれば賢者もいる。
和合は地震と原発災害があってツィッター
のことを思い出し、そこをステージに
気持ちを書いてみようとした。泥池に石
ころをなげてみたのかもしれない。
3月16日からポストをはじめる。
二時間ほど書いて、見るとフォロワーは
171人に増えている。またしばらくした
ら250人に増えている。そして当然、感
想の書き込みが山のようにある。メッセ
ージもくる。
これは和合のように詩の賞もらったけれ
ど、もひとつぱっとしないで、腹の中の
池にうねうねと遊泳する得体の知れない
鯉を飼っていた男にとっては晴天の霹靂
だったと思う。
ツィッターというステージは一方通行で
はなく「往復葉書を出して返事を貰うよ
うな」感じだっと和合はいう。
そこで4つ目の投稿で、そういった励まし
の返事をくれる見えない相手へ語りかける
ことばが出てくる。

 放射能が降っています。静かな夜です。

ここでもう和合は向こうにいる見えない人
たちのなかに自分を消して溶け入っている。
和合を批判した荒川洋治という詩人を二、
三度見たことがありますが他人と「往復葉
書」的な付き合いをすることを嫌がる人で、
わたしが通っていた文芸カルチャー学校に
もよく講演に来ましたが、他の詩人、作家
は講演後必ず飲み会に付き合ってくれまし
たが荒川だけは生徒たちと一線を画して相
手にしてない様子でした。
野村喜和夫ですら頭を低くして文学学校の
生徒(といっても一線で活躍している四十
代の詩人もいたしH氏賞の候補者もいたけ
れど)との飲み会に喜んで付き合ってくれ
たのですがね。荒川は生徒を頭からバカに
してました。
「詩を読める人間は50人もいればいい」
という荒川は「みんな」を受け入れて「み
んな」に融合していく和合が許せなかった
のでしょうか。
和合を批判した荒川も高橋源一郎もその他
の偉い先生方も一度でいいからSNSから詩
を発信してみてはどうでしょう。
さて、和合と佐野の対談本ですが、ペラペ
ラめくって目にとまった箇所を読んでみる
と政治的なスタンスで二人はけっこう息が
合っている。
たとえば孫正義の反原発と自然再生エネ
ルギー志向を称賛していた。
孫は韓国と中国のソーラーパネル企業と繋
がりがあり、3.11後、日本中の山や田園に
中韓製太陽発電パネルを敷き詰めた中心人
物の一人です。
その事業をソーラーパネル利権に群がる小
泉純一郎ら自民党の太陽光発電利権屋たち
があと押しした。東京都知事の小池百合子
も同じ。再生エネルギー推進と反原発運動
は一対となって「反原発」の大合唱が官民
で強力に推し進められた。
ソーラーパネルの普及はすさまじく
現在では釧路湿原までがパネルに埋まろ
うとしている。
【釧路湿原周辺にメガソーラー
https://toyokeizai.net/articles/-/676109?display=b
https://www.youtube.com/watch?v=UJdIRNibvco
3.11当時、環境保護関連のNPOに夫婦
ともども入っていた和合は今この事態を
どう思っているのだろう? いろいろ調
べてみたが忙しいのだろうか、和合がメ
ガソーラーの自然破壊について言及して
いる発言は見当たらなかった。和合は環
境保護のNPOをなぜやってたのだろう? 
教師だったからそういう団体に誘われて
共同体のよしみで入ってたのかもしれな
い。
しかし政商で強固な反日思想を持ってい
る孫正義といっしょになって原発反対は
まずい。
山本太郎という、なかなかに愛すべき人格
の政治家が原発反対を叫んでいるのをみる
と惜しいなと思うのと同時に和合も山本も
生きて生活している庶民大衆への想像力
が貧困だといわねばならない。
わたしも原発の老朽化には昔からネット上
で警笛を鳴らしてきましたがそれは原発反
対だからではない。あと10年ほどすれば
わかると思いますが原発は歴史の必然であ
ってどれほどリスクがあろうと避けること
は出来ない。ならば頭脳と資金を投じて可
能な限り原発の安全性を追求するしかない。
使用済み核燃料の問題も予算と頭脳を投入
すれば日本のロケット技術で簡単に小惑星
に投廃棄することができる。中国は月面に
原発施設をつくるとを先日、発表しました
が、日本は出来ることをしないで無意味に
わーわー反対反対と騒いでいる。
中東情勢が悪化してエネルギー危機が近づ
いている今、原発の再稼働は必然になって
いる。もしこのまま原発の研究発達を放置
していれば危機が来たとき、日本人の多く
が死ぬことになるでしょう。

あとですね、これは書きたくはなかったの
ですが
ちょっとgoogleの検索に「和合亮一批判」
と打ち込んでみる。と、いきなり伊藤比呂
美とかいう女性詩人のひどい詩が登場して、
そのことばの荒廃ぶりにひたすらげんなり
してしまった。
https://www.asahi.com/special/kotonoha311/itohiromi/
(「料理する、詩をかく」伊藤比呂美)
この方は詩人というよりサヨク活動家な
んでしょうかね。だから朝日のような新聞
がとりあげなんとか「詩人」として食って
いけるのでしょうけど。それにしても今の
日本の詩壇ってなんと凄まじい荒廃ぶりだ。
こういう女性が和合を擁護して「詩人の
良心を信じたい〈ことのは311〉」と
いったらしいけど、詩人に良心なんか求
めるな! というか、あらかじめそれが在
るのが詩人だと思っているようなその言
いざまの傲慢さに殺意すら覚える。別に
殺意覚えるほどの相手でもないけど。
次に検索すると平居謙という方の文章が
出てきた。
https://blog.goo.ne.jp/siikaryouzannpaku/e/c780c788729fd9bf3eff160b2a2c5b12
(自由詩時評 第145回 和合亮一『詩の礫』
論2015 その1)
もう誰か、この男、動物園の檻にでも入れ
て鍵かけとけよ。こんな文章人前にさらす
なよ。笑
あ、冗談ですよ。ジョーク。ふふ。
凄まじいね。これが詩人かよ。いや、これ
だから詩人なのかもしれない。
ただ、平居なにがしという方のあまりにも
あまりな文章──なになに「これは詩評と
いうよりも「友情論」として読んでいただ
きたい」ですと!? そんな、一、二度会
っただけの相手からいきなり友人扱いされて
かってに「友情論」なんか書かれたら和合
もずっこける以外ないやろ。笑
でもまあ平居のお陰で『詩の礫』の幾つか
を読むことができた。感謝です。


散文(批評随筆小説等) 偶然、和合亮一を少し読む Copyright 室町 礼 2025-04-26 08:03:13
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