執着を消し去る入魂トロールマシン ~トロールの神話~
菊西 夕座

「くうみ」が空っぽの身だからといって無意味などころか最大のより所にもなる
ということで神は服をお脱ぎになって今夜はすっかり「くうみ」となりおおせた
神の不在をなげくどころか不在にこそ神の裸体があることを星ぼしは知っている
ということで「くうみ」を「かみ」と短縮形で発音することに快感すらおぼえる

ジャストフィットの「かみ」にもはや付け入る空身はないかといえばそうでもない
まだ神の脱ぎ捨てた服にわたしたちの街も希望も天国もびっしりこびりついている
だがその服に神の不在が含まれているからといって「くう」をかぎつけてはいけない
神の不在をなげくどころか不在にこそ神の裸体があることを死者たちは知っている

ということで入魂トロールマシンを生みだした未来の人間たちが機械化の存在となり
つまりは魂とマシンの接続不良で気化以下の液体化状況に読みがズレるはめに陥り
さらには液もれが駅の通過を意味するというお粗末な誤訳が乗車拒否の事態を招くと
プラットホームで置き去りをくらった人々は未来よりも神話の世界を帰路に定めた

機械に頭を突っ込んだ途端にコントンロール不能、混沌ロール不能と叫ぶ魂にたいして
マシンの方はエビの尻尾よろしく完全な弧をえがいてOKのサインを出したかと思うと
尻尾をぴーんと後ろに跳ねた勢いで魂を「くうみ」の彼方へ運び去って終着を消しさった
線路沿を歩く人々は空をみあげて神の服にあいた穴に巨大な徒労(トロール)を託した


自由詩 執着を消し去る入魂トロールマシン ~トロールの神話~ Copyright 菊西 夕座 2025-04-20 10:56:47
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