pale a ir
ryinx

幻のような町にいた どこかで風景が流れる光景を眺めていた 音のない世界だった 時折誰かとすれ違った気がした なにも見ないようにしていた 鳴いている仔猫を見かけた気がする 歩道橋の階段を登り 車の流れる風景を見ていた 人が通り過ぎたような気がした 廃校の扉をくぐり抜けていた 以前は誰かいたのだろう なぜだか少し悪い事をしているような気がした 風が吹いている 誰もいなかった 校舎の正門のガラスには埃がついていて 窓枠も錆びていた そこから校庭を見下ろした 遠くの方にサッカーのゴールがまだある 薄曇りの日だった 瞼を閉じると暗闇のなかに星が流れた気がした 図書室の前に立っていた シャッターは閉じていた まだ本は置いてあるのだろうか あるいはどこかに処分されたか たしか以前ここにいた気がする

 『どこでもない場所』

遠くで鳥が鳴いている 静かな夜だった 時間が流れている 椅子に腰かけ本のページを捲った 遠くで星が流れている 瞼の裏側が眩しい カタカナで筆記された図書カードに見覚えのある名前があった 窓の外に誰かがいる 樹が風に揺られているだけだろう そうか ここに誰かがいたのだろう 風に窓が揺れていた

時計のなかで 誰かがねじを廻している そうでなければいけないはずだった けれど ただの思いちがいだろう 雨の匂いがする 外では風が吹いていた

 こどもたちの ないている
  (声が)


自由詩 pale a ir Copyright ryinx 2025-04-16 02:46:20
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