すべてを夢州(ゆめしま)のなかにかえしたとしても
秋葉竹


記憶はおそらくは戻らないだろう
泳ぎ去る魚がおそらくは戻らないように


春の大阪湾は
あまり悲しくなくて、いいな


バンコクハクランカイなんて
知らないけれども


夜空をみあげると
そこにみえる淡路島までの
星々の道がみえる気がする

あたし、照れるけど、
泳げないから夜空を飛ぶ予定なんだ
(恥じる、じゃなくて?)
だって、ひとが水に浮く理由を知らないから

港からすこし離れた教会では
神聖で敬虔な祈りが
よごと神さまに捧げられているのだろうけれども
できるだけの善いことを
あたしは行いたいことを
この部屋で孤り神さまに
誓うよ。


忘れさられた大切な想い出でさえ
もはや消え果てて
戻り来る懐かしい
一匹の魚とておらず

来る春にひとり取り残された北風が
月をみあげてなにに祈ることもなく
ただ吹き、
吹き、
吹き、
吹き終わるよ。

波音が聴こえるちいさな家に住めれば
一匹の魚も泳がない月の海を
ただ眺めるだけで
こんな心でも
うすく清くなれるような
気になれる、かな?

月もひとり、だね
あたしだって、ひとりだ

ちょっと、よかった

って

想ってしまった、
失礼。










自由詩 すべてを夢州(ゆめしま)のなかにかえしたとしても Copyright 秋葉竹 2025-04-10 15:45:42
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