ブザマ
栗栖真理亜

ようやく冬支度を始めた夜の気配は
肌冷たくひと撫でする
慌てて布団に潜り込み
達磨のように目だけギョロリと
外の気配を窺った
掛け布団の肌触りはまだ冷やっこく
徐々に体温で温められてゆくのを感じる

あゝこの世で一番の花魁は
冷え切った牢獄に繋がれたまま
のちに亭主になるはずの幼馴染の男は
他の女の欲にかまけて助けにも来ない

これで九十九パーセント
うまくいかないリスト入りに決定です
ひたすら隠されたペルソナ
覗く瞳から憂いと詩が溢れ落ちて
まるで穴の隙間から水が逃れ出るように
彼女の望みは潰えた

それと入れ替わり立ち替わり
鮮やかな金髪の美丈夫は
肉感的な闇の女王に微笑み
冷たいツラを張り付かせながら
彼女の耳元に甘い夢を囁く
彼女の分厚く赤い唇が
蠢きながら三日月型に変化する
まるで悍ましい蛭のよう

ぴんくにむらさきに混じり合うたびに
極彩色のマーブル模様となって
目をチカチカさせる

唐突に金切り声が薄闇を切り裂いた
黒い羽根を広げ鋭い眼光と嘴を持つ夜鳥か
錦糸で彩られた錦の帯は解け
暴走する網のように
石畳の海へと放り込まれた


自由詩 ブザマ Copyright 栗栖真理亜 2025-04-09 20:55:45
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