花のあとさき
そらの珊瑚

ミモザの木は枯れてしまい、可憐な黄色の花はもう記憶のなかだけの花になった
枯れた原因は、ミモザの木に肥料を与えたせいだったようだ
あとでわかったのだが、ミモザにとっては不必要なものだったらしかった
いずれにしてもとりかえしはつかない
考えてみると、よかれとおもって裏目に出てしまった経験は人生においてたくさんあったように思う
自分のエゴに鈍感だったこと
が、はっきりとは思い出せない
空に浮かんではながれていく五分前の雲の形がどうだったか思い出せないように

横断歩道の先に手向けられた白い花束が風に倒され散らばっていた
先日、そこで交通事故があり、命を落とした人はイタリア人のおじいさんだったという
犬の散歩している姿を何回か見かけたことがある人かもしれないと思った
もふもふの大きな白い犬だった
おじいさんと同様に気の良さそうにゆっくりと歩いていた

満開に近い桜の花を風がゆらしていく
天国だったら永遠に散らない花でいられるのかもしれないが、ここでは叶わない願いだ
春はさわめく
心もさわめく
散った桜のはなびらを拾ってはポケットいっぱいにした今となっては遠い日
あのはなびらはどうしたんだったっけ
思い出せない
思い出せるのは、死んだばかりのつめたい花の柔らかさだけ



自由詩 花のあとさき Copyright そらの珊瑚 2025-04-08 13:00:51
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