愛惜の遠路をのばすわかれ歌
菊西 夕座
愛惜の遠路をのばすわかれ歌
~海がしずめば星がのぼり、星がしずめば海がひろがる~
愛のめくばせはむなしさの海を一瞥でかきけし
なみだの一滴をはてしない夜空の星へとかえる
ひとつのまばたきで二人は熱くまじわるが
一人のなみだは相手の海溝といれかわりもする
とおくの星こそもっともせつないわかれの形見
かつての愛がこぼれてひろがるなみだの海は
どこまでもとおく二人をはこんではなさない
ちり散りになればなるほど知り増すひろがり
過去がとおくなればなるだけふかまる愛惜
二人が結わえたサヨナラは波にねじれて
未来にいけばいくほど過去へとよせかえし
追憶にすがればすがるほどとおくただよう
ひかりは星になり今ではとどかない空のかなた
その星をたよりに夜をいきぬくこどくな旅路
わかれがみちびく寂寥の足跡こそ幸いのあかし
めくばせに出逢い、まばたきにわかれる潮めぐり
岩にくだかれる波しぶきのように熱くはねて
ねじれゆくときのかなたの星まで舞いあがり
はてないむなしさを一別のなみだに満たしては
ひき波にまた星をうかべ空にかえすわかれ歌