ダンス・ダンス
umineko

友人のお義母さんのお通夜にいく。キリスト教なので、本来通夜はないらしい。前夜式。
郊外の住宅地は、道がひどく狭くて、JRの線路には、森がすぐそこまで迫っていた。

  「故 ○○ 前夜式」

当たり前の住宅の玄関に、貼られた白い紙。中では牧師さんの、低い声が響いてる。
玄関の前、砂利の通りに友人と、立つ。

仏教では「戒名」というものがあったはずだ。死者に贈られる、新たな符号。
でも、ここにはそれがない。お義母さんは、お義母さんのまま死んでいく。

(せめて死者になったら。)

私は思う。私は、新しい名前が欲しい。私はたぶん自由で、とても、さみしい。

だから。新しい私になるんだ。

みんなには。これまでの私を、覚えていて欲しいんだ。束の間であってもね。
でも私はもうそこにはいない。新しい世界で、ダンスかなんか、習っているかもしれないよ。

私はたぶん自由で。

とても、さみしい。
 
 
 
 


自由詩 ダンス・ダンス Copyright umineko 2005-05-28 00:38:46
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