レンガと人形
竜門勇気

白い柱の上で
しゃべる猫を待ってた
しゃべる猫はフード付きの
グリーンのコートを着てる
誰が見たって間違えようのない
ぎらぎらした勲章をつけて

投げつけて
振り払って
ここに来るまでのあいだ

くだけちる
少し間があって
壁に赤い花が咲いて

口笛を高く吹く穴だらけの道
歩道と呼ぶ人も
いるかもしれないってくらいの
ただ何かと何かを分けるために
作られた道を歩いてる
世界じゃない場所にいるつもりで
猫を待ってた

くだけちる
振り払う
赤い花が咲く
茶けた粉が舞う
どっちだ?
どっち今投げた?
なにがあの壁で花になった?

刑務所の横の道で
とても親切な人に出会ったよ
二分間の話で彼のことがよく分かった
「もう二度と、寄生虫なんかに俺は負けないんだ」
二回続けてまばたきをした
二秒ほど目を閉じたまま
もう一度言った
もう二度と、寄生虫なんかに負けないんだ
彼のことがよく分かった

僕の話を猫は興味深そうに聞く
時々うなずいたり
目頭を押さえたり
すこしえずいたり
青い瞳の中に月が映ってる
金星の小さな光すら見えたかもしれない

ぎらぎら光る勲章よりずっと
遠くを見る猫の瞳がまぶしかった

くだけちる
振り払う
赤い花が咲く
茶けた粉が舞う
どっちだ?
どっち今投げた?
なにがあの壁で花になった?
その勲章はどうして君の胸にあるのか思い出せたか?



自由詩 レンガと人形 Copyright 竜門勇気 2025-04-03 10:17:18
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