よるにいどうする
fujisaki

夜がはじまる、八重洲口バスターミナル、年末だからか人がたくさんいて、映画のオープニングみたいだって思う、見知らぬ若い男女の、かばんがぶつかって、実はアパートのおとなりさんでした、色々あったけど、めでたしめでたし、でも、そういう筋書きには出演しないんだ、センスのいい監督が、編集したとしたら、彼のいない週末に、アイロンをかけている、その後ろ姿が、きっとサムネイル、朝、駅へ向かう倍の時間をかけて、ゆっくり家に帰る、そういうのを贅沢だねって、どうしても思ってくれなかった、だから、乗り込むんだ、ここじゃないどこか遠くへ、移動するために、あたしは、

夜行バスの室内灯は、ブルー、チューハイを二缶空けても眠れなくて、ついに、三つめの、SA、真夜中、冷たい空気を吸い込みながら、こわばった体を、ストレッチ、する、軽から出てきた、スウェットをはいた若いやつら、四人くらい、丸まってたばこを、吸って、いて、シートに戻るのが嫌で、ぐだぐだベンチに座っていると、倒していいですかと、さっき聞いてきたおっちゃん、前の職場の上司に、めっちゃ似てる、ぼりぼり頭かきながら、自販機の前で迷っていた、あまりに人工的な、自販機の白い光、出発しても、やっぱり室内灯、ブルーで、窓からもれてくるのは、高速の、照明灯の、オレンジ、一度、車内トイレに行ってから、ようやくうとうとしたところで、電気ついて、車内放送かかって、無事に、運ばれたんだ、あたしは、

びっくり、した、こんなにも少なかったんだ、段ボールに、つめてるときは、ずいぶん、くたびれたのに、彼の、でもなくて、共用の、でもない、じぶんの、もちもの、たった三つ、Mサイズ、段ボール、たまげた、さすがに、もっと、いろいろ、この部屋で、あったはずだけどな彼ともたくさんいろんなことがあったんだけどないやあったつもりなんだけどな、っていう、きゅんとなる、さみしい、きもちと同時に、いなくなれる、とおもった、三つ、Mサイズ、段ボールで、身軽だ、いままさに、やろうとしている、ように、準備を、ちゃくちゃくと、進めているように、このまま、いなくなれる、いなくなれる、いなくなれるんだ、あたしは、

祖母のお、通夜の準備、彼の親戚たぶん五十く、らいの、あたしたち孫みんなで、お花、好きだった白いお花、いっぱい並べ、てあげてた、のにね、なのに、あのばばあ、聞こえる、ように、背中ごしに、あ、か、る、い、花の、方が、ね、お顔が映えるのよ、信じらんなかった、どついたろか、おもて、でもお顔、あんまり、安らか、だったから、そのぶん、お花きちっと、丁寧に、並べて、憤りを、お花並べることに、ぶつけて、信じらんなかった、ばばあそれから横で黙って神妙な面持ちで立ってやがった、彼、信じらんなかった、ほかにも、我慢ならないこと、これまでたくさんあったけど、今回ばかりは、って思ったから、帰りのタクシー、言ってしまったんだ、ぜんぶそれでも、彼の顔は、なにも言わなかったし、何考えてるのか、わかんなくて、どうしたいのか、わからなくて、どうしたらいいのかも、わからなくて、ていうか、もう全然わかんない、って思ったら、たぶん首都高の、ぐるぐる下るトンネル、遠心力で、肩にもたれながら、泣いちゃったんだ、あたしは、

LCC、22時20分発、窓際がよかったけれど、真ん中の席で、両隣は気が早いサングラスぶらさげた、大学生、外の景色が見えなくて、なんか、映画の、セットみたいだな、本当に飛んで、いるのかな、メルカトル図法でモニターに映し出された、現在地グアム上空、太平洋、マリアナ海溝、とからへん、たぶん、すごく高いとこだから、きっと、インターネット、とか、飛んでんじゃないのかな、詳しくないけど、こういうとき、寝れないたち、だから、夜泣きの、子どもをあやす母親の、ひそひそ声を、注意深く聞いている、なんていっているか、わかんなくても、いかにも申し訳ない、声色で、そこに人種はないなっ、て、思った、がんばれって、思った、母親も、それから子どもも、せいいっぱい泣けよ、こんな、映画のセットみたいな空間気にせず、泣いて泣いて、泣きまくれよ窓、つきやぶって、ここらへんの高さが、住まいの神様に聞こえるくらい、泣けよ、そしてそっと、おもいたって、録音する、機内に響く赤子の泣き声と、必死にあやす母親の声、なにも受信せず、なにも、送信しな、い、機内モードで録音して、いつか思い出して再生するだろう、あたしは、あたし、は!


自由詩 よるにいどうする Copyright fujisaki 2025-04-01 21:22:59
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