幼な髪の君
栗栖真理亜

僕の大切なベビーフェイス
無理に笑わそうとして泣かせてしまったんだ
細く柔らかな髪がサラサラと風になびく
漆黒のカーテンが
涙でクシャクシャになった君の横顔(かお)を隠して
僕から遠ざかってゆくよ

こんなにも
こんなにも
愛しい君なのに
僕はふてくされたような振りをして
あらぬ方向に視線を向けた

あぁ、僕の優しい天使
月明かりが眩しいと眼を細め
僕の肩にもたれかかったアノ頃
そのまま何も言わずに連れ去ってしまえば良かった

灰色の空は僕の心に暗い陰を落とし
後悔と無念とが交差する

うつ向いたふたりの過去は
まるで水彩画のようにぼやけて
水溜まりに浮かんでるよ
あんなに輝いていた未来も哀しみと共に消え去り
過酷な今が僕らの胸に痛みとして残る

あぁ、愛しの可愛い恋人
どうか僕を責めないで
夢の傷痕(あと)はふたりだけの深く悩ましい絆

たったひとつの形見として僕の胸にしまっておくから


自由詩 幼な髪の君 Copyright 栗栖真理亜 2025-03-29 23:12:38
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