山人

遠くでカラスの鳴く声がしている
そして、そのそばで風も鳴いている
しかし、今、風はおさまっている
気持ちがふさぐとき、風は楚々とやってくる
其処此処の隙間に蛇のような舌を繰り出して舐めていく

頭蓋の、広い空洞の中には古い皿があり
その上に蠟燭が立てられている
耳から入った風がふふぅと吹いて炎を揺らす
瞼の隙間がぷくりと動く
私の脳は借りてきた猫のようにひどく小さくなって
頭蓋の中で申し訳なさそうに黙って座り込んでいる

私の脳は、その、蝋燭に手をかざし
まんべんのない、無表情を創り出している
いつの日か、口から入ったのだろう
小さな木の葉が、私の脳内に
ひらりと舞い上がった


自由詩Copyright 山人 2025-03-26 06:47:23
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